抄録
本研究では, 公共受容問題の解決策としての「信頼」の重要性に着目し, これが形成される認知的プロセスを明らかにすることを目的として, 既往研究で提案されている信頼形成プロセスモデルの実証的妥当性を検証した. その結果, 本研究で措定した仮説の妥当性が概ね支持されるに至った. これは, 強制的な施策が推進される場合, 国民はその行政の行為を疑心の目で監視することとなるが, このとき, 行政が真に誠実に, 長期的, 公共的な観点から必要とされている公共事業を実施している場合においては, その公共事業の必要性を国民に「説明」するという行為によって, 信頼の崩壊の危機は回避し得るものであることを含意するものである.