2008 年 25 巻 p. 201-212
環状線整備などの郊外部の交通施設整備は都心空洞化の主な要因の一つとされている. しかしながらこの主張の理論的根拠は十分に示されていない. そこで本研究は, 交通施設整備と商業の都心空洞化の関係性を都心と郊外からなる立地均衡モデルを構築して理論的に分析を行う. その結果郊外と都心を結ぶ放射線整備を行った場合には必ず都心商業が繁栄する一方, 郊外同士を結ぶ環状線整備を行った場合には, 都心空洞化が進行する場合とそうでない場合があることを示す. 後者のケースは上記に示した従来の主張の反例となっており, 郊外環状線整備が必ずしも都心空洞化を引き起こすわけではないことを示す.