2008 年 25 巻 p. 37-48
本研究では, 土木計画における公共受容や合意形成の問題を考える上で, 個人の心理的傾向性として「大衆性」に着目した. そして, オルテガの政治哲学理論を踏まえ, 行政行為が一切変化しない状況でも, 公衆が大衆化することで公共事業に対する合意形成が困難となるであろうという仮説を理論的に措定した. そして, アンケート調査を通じてその仮説を実証的に検証した. その際, 大衆社会論の代表的古典であるオルテガ著「大衆の反逆」(1930) を基にして構成された個人の大衆性尺度を用い, それら尺度が, 政府・行政や公共事業に対する態度に及ぼす影響を分析した. その結果, 本研究の仮説が支持され, 大衆性が公共事業に対する合意形成を阻害する可能性が示された.