Journal of Pesticide Science
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種の感受性分布を用いた68種の水稲用農薬の生態影響評価
永井 孝志
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2016 年 41 巻 1 号 p. 6-14

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抄録

日本で主に使用されている水稲用農薬68種を対象に,高次の生態影響評価として,文献から得られた毒性データに基づいて種の感受性分布 (SSD) の解析を行った.SSDは,予測無影響濃度を推定したり,農薬による生態リスクを定量化したりするために有効である.SSDの5パーセンタイル値 (HC5) を計算して,これを予測無影響濃度とした.現行の水産動植物の被害防止に係る登録保留基準値とHC5値を比較したところ,68農薬のうち50農薬でその差は小さかった (10倍以内).ところが,特定の作用機作に分類される9種の殺虫剤と9種の除草剤では,登録保留基準値が10倍以上高かった.すなわち,特定の作用機作の農薬においては,現行の制度では生態影響を過小評価してしまうことが示唆された.これは,どの種に対して毒性が強いかという種間の感受性差が,作用機作によって明確に特徴的であることに起因する.

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© 2016 日本農薬学会
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