論文ID: D18-036
イネ(Oryza sativa)は干ばつで枯死するとその後に給水しても復活することはないが,酢酸水溶液を与えたイネは,乾燥ストレスで一度地上部が枯れながらも,再給水すると新たに地上部を伸長させる特異な乾燥耐性を獲得する.処理中の酢酸代謝を解明するために,13Cで標識した酢酸をイネに処理し,LC-MS及び13C-NMRで13C標識された酢酸代謝物を追跡した.根抽出物のLC-MS及び13C-NMRの分析結果から,処理された酢酸はイネ体内に取り込まれ,グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)によってγ-アミノ酪酸(GABA)に代謝されると示唆された.酢酸処理したイネのGABA蓄積量を調べると,根に続いて地上部でGABAが蓄積され,また地上部のGABA蓄積量に比例して乾燥ストレスに対する生存率が増加した.以上から,地上部のGABA蓄積が酢酸によるイネの乾燥耐性に寄与する可能性がある.