ベンゼン環を14Cで標識したベンチオカーブを用い, 室内実験により, 土壌中の分解に関与する土壌要因の影響について研究した. 性質の異なる3種類の土壌を, 畑地状態, 酸化的湛水および還元的湛水状態とし, その中でのベンチオカーブの分解を比較すると, 土壌間ではあまり差は認められず, 土壌の酸化還元状態が分解に大きく影響した. いずれの土壌でも, 酸化的 (好気的) 条件ではベンチオカーブは速かに分解し, 同時に14CO2が顕著に生成した. 還元的 (嫌気的) 条件では分解が遅く, 14C2の生成も少なかった. また, 滅菌土壌中ではベンチオカーブの分解はほとんど認められなかった. 中間生成物相互間の比率は土壌条件の差によっても大差がなく, 土壌条件が異なっても同一の分解経路で分解するものと推定された. さらに, ベンチオカーブの反覆施用, シメトリン, CNPおよびプロパニルとの混合施用はベンチオカーブの分解に大きな影響を及ぼさなかった.