日本公衆衛生雑誌
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原著
シックハウス症候群の症状と関連する要因 北海道の一般住宅を対象にした実態調査
西條 泰明岸 玲子佐田 文宏片倉 洋子浦嶋 幸雄畠山 亜希子向原 紀彦小林 智神 和夫飯倉 洋治
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2002 年 49 巻 11 号 p. 1169-1183

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抄録

目的 本研究では住宅環境の問題として社会的に注目されているいわゆる「シックハウス症候群」の実態を明らかにするために,一般住宅を対象に北海道で居住者の自覚症状と住環境の関係を調査した。
方法 札幌市近郊のハウスメーカー24社の協力を得て新築・改築数年以内の住宅1,775戸を対象に,住宅の構造や状態,生活態度,現在の症状についての質問票を配布し,564軒から回答を得た(回収率31.8%)。症状については,その住居内でもっとも症状の強い人について記載を依頼した。新・改築後に発症・悪化した症状をカウントし,11のカテゴリーに分けて,1 個以上のカテゴリーに発症・悪化した症状を有する場合を「発症・悪化群」と定義し,2 個以上のカテゴリーに症状があり多訴と考えられる症状を有する場合を「多訴群」と定義し,症状と関連する住宅側の要因を検討した。
結果 回答を得た564のうち「症状がある」と記載したのは210軒(回答世帯の37.2%)で,その中で「発症・悪化群」は94軒(16.7%),「多訴群」は57軒(10.1%)であった。新・改築後に発症・悪化した自覚症状はそれぞれ,のどの症状が7.1%,皮膚症状が6.9%,精神・神経症状が5.3%,眼症状が5.1%,鼻症状が4.1%であった。単変量解析では「臭いのある家具の有無」について発症・悪化群のオッズ比は2.66,多訴群のオッズ比は3.24であった。「芳香剤の使用」は発症・悪化群のオッズ比は1.78であった。屋内で結露・カビの発生の有無については,結露・カビの発生があるほうが発症・悪化群,多訴群とも有意に多く,「結露」の発症・悪化群のオッズ比2.98,多訴群のオッズ比3.32,「カビ」の発症・悪化群のオッズ比は3.12,多訴群のオッズ比は3.24であった。さらに,湿気の指標であるカビと結露について調べたところ,発症・悪化群,多訴群とも指標がどちらか 1 つの住宅よりも両方あるほうにオッズ比が高くなり,湿気の指標は相加的な関係が認められた。多変量解析の結果,カビ・結露は発症・悪化群,多訴群とも有意な関連を認めたが,臭いのある家具の有無は多訴群のみ有意の関連を認め,芳香剤の使用は関連がなかった。
結論 本研究では,新・改築後数年以内の居住者について調査を行ったところシックハウス症状の原因としてガビ・結露の出現といった湿気が高いことと,家具や芳香剤の臭いが関係していることが示唆された。シックハウス症候群への対策は湿度環境への配慮も必要と考えられる。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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