日本公衆衛生雑誌
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原著
介護保険導入による市区町村の保健福祉サービスの変容
白鞘 康嗣島田 直樹中原 俊隆潮見 重毅里村 一成武村 真治近藤 健文
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2003 年 50 巻 10 号 p. 959-969

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抄録

目的 介護保険制度実施の前年度にあたる平成11年度,介護保険制度実施年度にあたる平成12年度および介護保険制度実施の翌年度にあたる平成13年度における市区町村の保健・福祉サービスの供給体制について質問票による実態調査を行い,市区町村の保健・福祉サービスの時系列的変化について検討を行った。
方法 全国の全市町村(671市,1991町,567村,計3229市町村)および東京都特別区(23区)に対して,平成13年11月に保健・福祉サービスに関する質問票を送付した。なお調査票には,保健師活動,保健・福祉事業費,介護保険の実施状況など,各市区町村における保健・福祉事業の実態を幅広く把握するための調査項目が含まれており,回答は各市区町村に勤務する保健師の代表もしくはそれに準ずる者に依頼した。
結果 平成13年12月から平成14年 1 月にかけて441市 (回答率:65.7%),800町(回答率:40.2%),197村(回答率:34.9%)および16区(回答率:69.6%)の計1454市区町村(回答率:44.7%)から質問票の返送があった。介護保険事業の実施にあたって,すべての業務を単独で行っている市区町村は,全体の42.6%であった。老人福祉サービスの変化を予算面から見るために,平成12年度および平成13年度の介護保険給付以外の老人福祉事業費と,平成11年度老人福祉事業費との比をそれぞれ算出してみると約40%であった。各市町村に雇用される平均常勤保健師数および保健師全体の活動時間の配分割合に関しては,介護保険導入による変化は見られなかった。また,44%の市区町村が,介護保険専従保健師を雇用していた。高齢者 1 人当りの介護量の変化としては,増加したと回答した市区町村が全体の80%以上を占めている。介護の質の変化としては,向上したと回答した市区町村が全体の72%を占めている。介護を受ける高齢者数の変化としては,増加したと回答した市区町村が全体の81%を占めている。
考察 介護保険制度の導入が,地域保健サービスあるいは地域福祉サービスに対して悪影響を与えたと考えている市区町村は少なく,むしろ市区町村の保健・福祉サービスに対しては良い影響を与えていることが示唆された。また,介護保険制度は介護そのものに対しても良い影響を与えていることが示唆された。

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© 2003 日本公衆衛生学会
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