2003 年 50 巻 4 号 p. 303-313
目的 わが国では,ライフスタイルと精神的健康度との関連を検討した研究が少なく,その検討も労働者を対象としたものが中心である。本研究では地域住民を対象に,ライフスタイルと精神的健康度との関連を性・年齢階級別に明らかにすることを目的とした。
方法 1998年,40~60歳代の地域住民2,288人を対象に自記式調査票を郵送し,1,642人(回収率71.8%)から回答を得た。このうち今回の解析項目すべてに回答した1,343人(男性615人,女性728人)を対象とした。精神的健康度の測定には General Health Questionnaire (GHQ) 12項目版を用いた。GHQ 採点法により計算した総得点が 4 点以上の者を高得点群すなわち精神的健康度が低い群と定義し,健康に関連するライフスタイル 8 項目との関連を検討した。GHQ についてはまず,良好なライフスタイルを 1 点として,その総得点の平均値を精神的健康度の違いにより比較した。次に,各ライフスタイル項目について,好ましくないライフスタイルを持つ者が精神的健康度が低くなるオッズをロジスティック回帰分析により計算した。
結果 GHQ 低得点群すなわち精神的健康度の高い群は低い群に比較してライフスタイル得点が高かった。この傾向は男性では年齢が高いほど強く,女性では若い年齢ほど顕著であった。次にライフスタイル各項目でみると,定期的に運動を行っていないと答えた者は男性では高い年齢階級の方が精神的健康度が低くなるオッズ比が高かったが,女性では反対に若い年齢階級の方がそのオッズ比は高かった。睡眠が 7~8 時間でないと答えた者は女性は40, 50歳代で精神的健康度との関連が強かったが,男性では60歳代で強い関連がみられた。食事に関する項目では,女性に関連を認めた項目が多かったが,塩辛いものの摂取については男性の方がどの年齢階級においても精神的健康度との関連が強かった。
結論 日本の地域住民において,精神的健康度はライフスタイルと有意に関連していた。この関連の強さは性,年齢階級により異なることが明らかになった。