日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
愛知県における糖尿病予防対策 保健指導者に対する実践的な糖尿病指導者研修会を開催して
津下 一代早瀬 須美子松本 一年加藤 昌弘山本 昌弘佐藤 祐造
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2003 年 50 巻 4 号 p. 349-359

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抄録

目的 糖尿病発症予防・改善のための生活習慣介入を効果的に行うためには,予防体制の整備,保健指導者の資質の向上が必須である。愛知県では平成11年度から糖尿病対策事業を開始し,県糖尿病対策部会を開催するとともに,各保健所を中心とした地域連絡会議を開催し,地域の実情にあわせた予防体制の確立をめざして活動している。さらに,保健指導者の糖尿病についての理解を深めるため糖尿病指導者研修会を開催しているが,その意義について考察した。
方法 糖尿病学や教育手法,評価法について,体験を重視した実践的な研修会を開催した。栄養・運動指導では対象者にわかりやすく楽しい指導法を,また自らの家庭実践記録や健診データを用いたロールプレイをする中で指導対象者の心理を考え,効果的なアプローチ法について学習した。また地域における糖尿病についての問題に関するグループワークを実施した。愛知県保健所の96%,名古屋市保健所94%,愛知県下86市町村の87%の施設から373人(保健師(77%),栄養士(16%))の参加があった。研修会終了直後,および 6 か月後にアンケートを実施した。
成績 1)研修会の重要度,理解度について各講座とも良好であり,再研修会開催の要望が多かった。2) 6 か月後のアンケートでは,「指導方法の工夫,改善」60%,「糖尿病関連の事業の評価」53%であったが,「積極的な他機関との連携」に新たに取り組み始めた者は32%,以前から実施していたものを含めても48%,「実態把握や課題の整理」に新たに取り組み始めた者は26%,以前から実施していたものを含めても46%にとどまった。3)研修会参加により糖尿病への関心が高まり,個別健康教育で糖尿病を取り上げる市町村が増えた。
まとめ 参加した市町村では,糖尿病予防教室のカリキュラムの中に実践的教育手法を取り入れるなど,研修会の効果を実際に確認でき,保健指導者に対して実践的な指導法を研修する機会を設けることの重要性が確認できた。今後職域指導者についても研修活動を広げ,県民がどこでも適切な予防教育の機会が得られるよう継続的な働きかけを行いたい。

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© 2003 日本公衆衛生学会
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