日本公衆衛生雑誌
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原著
ひとりで遠出できないとする高齢者の背景要因 大都市近郊に独居する自立前期高齢者における調査
渡辺 美鈴渡辺 丈眞河村 圭子樋口 由美河野 公一
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2004 年 51 巻 10 号 p. 854-861

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抄録

目的 大都市近郊に独居する生活自立前期高齢者において「ひとりで遠出できない」とする者が要介護状態移行の危険因子と考えられるかを検討するため,「ひとりで遠出できない」とする者の特徴を横断的に記述することを目的とした。
方法 生活自立前期独居者1,216人(男:209人,女:1,007人)を対象として主観的な生活行動能力に関する無記名自記式アンケート調査を行った。その評価には「ひとりで遠出できる」と「隣近所には外出できる。しかしひとりで遠出できない」を用いた。主観的な生活行動能力と社会参加状況および健康度自己評価,老研式活動能力指標,身体機能,身体状況,心理状況,生活習慣などの個人因子との関連を解析した。
成績 「ひとりで遠出できない」とする群は「できる」群と比較して,外出頻度は同程度であるが,趣味や町内自冶会活動などへの社会参加頻度が有意に低率であった。両群間では,健康度自己評価,老研式活動能力指標,視力,咀嚼力,1 km 歩行移動力,青信号中の横断歩行,骨折歴,1 日に 5 種類以上の服薬,脳血管障害関連自覚症状,間欠跛行関連自覚症状,身体の痛み,うつ状態,昼間の睡眠,1 日の食事回数,定期的な散歩や軽い体操などの項が有意な差異を示した。「ひとりで遠出できない」とする群は社会活動や老研式活動能力および身体機能が低水準で,傷病に対する自覚症状を有している者が多く,うつ傾向にあり,健康度自己評価も低かった。
 身体機能,自覚的症状,心理状態などの個人因子を説明変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果,「ひとりで遠出できない」には,1 km 連続歩行ができない,うつ傾向がある,固いものが普通に噛めない,間欠跛行関連の自覚症状があるなどが独立して抽出された。
結論 生活自立前期高齢者であっても,「ひとりで遠出できない」とする者は日常生活自立度の低下や要介護移行リスクを有していた。これら独居者は「近隣閉じこもり」のハイリスク者として注目し,要介護予防保健対策を講ずるべきであると思われる。

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© 2004 日本公衆衛生学会
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