日本公衆衛生雑誌
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原著
断酒会会員における抑うつと心理社会的要因
加藤 良寛武田 文三宅 健夫横山 英世大井田 隆
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2004 年 51 巻 8 号 p. 603-611

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抄録

目的 1) 断酒会会員の抑うつならびに心理社会的要因の状況を明らかにする。2) 抑うつに関連する心理社会的要因を明らかにする。
方法 某県内 7 か所の断酒会会員184人を対象に無記名自記質問紙を用いて調査を実施した。調査項目は属性,抑うつ尺度(SDS),生育家庭環境尺度,セルフエスティーム尺度,コーピング尺度(5 尺度:積極的な問題解決,逃避,他者からの援助を求める,諦め,行動・感情の抑制),首尾一貫感覚尺度(SOC)とした。
成績 1. 抑うつ平均得点は男子31.8点,女子35.8点で,男子の抑うつレベルは一般職域とほぼ同程度であった。コーピングは,「逃避」および「諦め」の行動が企業従業員より高い傾向を示した。セルフエスティームの平均得点は33.3点,首尾一貫感覚の平均得点は118.7点で,いずれも一般市民に比べ低い傾向にあった。
 2. 抑うつと断酒会会員歴,セルフエスティーム,首尾一貫感覚,コーピングの「諦め」および「積極的な問題解決」との間に有意な相関関係が認められ,断酒会会員歴が短い者,首尾一貫感覚が低い者,自尊心が低い者,コーピングの「諦め」行動をとる者,ならびに「積極的な問題解決」行動をとらない者ほど,抑うつ得点が高かった。
結論 断酒会会員の抑うつレベルは,一般職域とほぼ同程度であったが,自尊心,首尾一貫感覚,適切なコーピングが低い傾向にあった。断酒会会員歴が短く,自尊心ならびに首尾一貫感覚が低いほど,また積極的なコーピング行動を取らないほど,抑うつが高かった。

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© 2004 日本公衆衛生学会
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