日本公衆衛生雑誌
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市町村職員からみた市町村医療機関に勤務する医師への継続勤務の期待と関連する因子
藤原 真治岡山 雅信高屋敷 明由美梶井 英治
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2004 年 51 巻 9 号 p. 798-805

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抄録

目的 市町村職員を対象に,実際に市町村医療機関に勤務している医師について,地域医療を行ううえで重要と思われる特性への満足感と継続勤務の期待の評価を行い,両者の関連を検討する。
方法 デザイン:自記式質問紙郵送法調査(横断研究)。対象:平成12年 4 月 1 日現在の全国3,152市町村(全数)の国民健康保険担当者(以下,国保担当者)。国保担当者単独での回答が困難な場合には,国保担当者と他の市町村職員との合議にて回答するよう依頼した。回答のあった3,059市町村(94%)のうち市町村医療機関があった1,315市町村(42%)について検討を行った。期間:平成12年 7 月~9 月。調査項目:市町村医療機関に勤務している医師への継続勤務の期待と,地域医療を行ううえで重要と思われる保健,医療,福祉,人間関係,その他の項目について市町村医療機関勤務医師への満足感をそれぞれ評価した。
成績 1,315市町村のうちすべての調査項目に回答のあった1,092市町村(83.0%)を解析対象とした。現在勤務医師への継続勤務の期待は,「期待している」が全体の解析では56%,へき地指定町村では61%に認めたが,市では44%と半数以下であった。医師への満足感は,全体の解析では人間関係に関する項目で高い傾向にあり,最も低かったのは「医療機関の健全な経営(収支)」であった。多重ロジスティック解析にて医師への継続勤務の期待と関連した項目は,全体で「福祉活動への積極的な参加」(「保健活動への積極的な参加」との相関係数0.71)でオッズ比1.8(95%信頼区間1.3-2.5),ついで「住民との良好な人間関係」(「医療機関の評判」との相関係数0.604)でオッズ比1.6(95%信頼区間1.1-2.2)であった。「医療機関の健全な経営(収支)」もオッズ比1.3(95%信頼区間1.01-1.8)と有意な関連を認めたが,とくにへき地指定町村にてはオッズ比1.7(95%信頼区間1.2-2.4)と大きく関連した。「初期救急医療への対応」はへき地指定町村においてオッズ比1.6(95%信頼区間1.1-2.3)で有意に関連した。
結論 医師の継続勤務の希望と有意に関連したのは,全体では,保健・医療・福祉の連携に関する項目,地域住民との人間関係,医療機関の評判,医療機関の経営であったが,とくにへき地町村では医療機関の経営との関連は大きかった。救急に関する項目はへき地町村で有意な関連を認めた。こうした結果の違いは,市町村の地域特性に応じた医師へのニーズを反映したものでもあると考えられた。

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© 2004 日本公衆衛生学会
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