日本公衆衛生雑誌
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「健康日本21」地方計画における事業実施と評価
若林 チヒロ新村 洋未國澤 尚子山口 恵萱場 一則三浦 宜彦尾島 俊之坂田 清美柳川 洋
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2007 年 54 巻 6 号 p. 378-386

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抄録

目的 市区町村は,「健康日本21」地方計画においてどのような分野の健康づくり事業を実施し効果をあげているのか,中間評価や最終評価をどのように実施する予定かを明らかにし,市区町村が地方計画をすすめるための基礎資料を提供する。
方法 2003年 6 月に全市区町村を対象に実施した調査で地方計画を策定済み・予定とした市区町村1,446か所のうち,2005年 6 月20日現在の合併市区町村を除いた953か所を対象に質問紙にて郵送調査を実施した結果,793か所から回答があった(回収率83.2%)。このうち地方計画策定済み市区町村638か所を分析対象とした。調査は2005年 7 月に実施した。
結果 地方計画は2003年度に策定した市区町村が多く,中間評価は2006~2007年度実施予定が 6 割を占めた。最終評価は 4 割が2010年度実施予定としていたが,2011年度以降も半数を占めた。中間評価,最終評価ともに 6 割以上が実施予定であったが,人口10万人未満では人口規模の小さい市区町村ほど低率であった。
 中間評価の方法は,統計資料の利用,独自の質問調査の実施,健康診断成績の利用,他目的で実施した調査利用の順で,10万人以上の市区町村は独自の質問調査と他目的で実施した調査利用が高率であった。統計資料は,10万人未満のところでは地域保健・老人保健事業報告が,10万人以上では人口動態統計が多く,医療費の統計,老人医療費の統計,介護認定資料は 3 万人未満で高率であった。
 事業実施は,栄養・食生活,身体活動・運動,歯の健康の順に多く,たばこ,歯の健康,アルコールは10万人以上の市区町村で高率で,休養・こころの健康づくり,がん,糖尿病は,1 万人未満で低率であった。事業の効果があったとした市区町村の割合は,身体活動・運動とたばこで約半数と高く,アルコールで 2 割と低かった。
結論 「健康日本21」地方計画は,中間評価や最終評価の実施予定年度を遅くする市区町村が増えていた。中間評価の方法は,独自に調査実施するよりも既存の統計資料を利用するとした市区町村が多かったが,市区町村別のデータが得られる統計資料は少なく限界がある。健康づくり事業で効果があったとした市区町村はいずれの分野でも半数以下であった。国は中間評価や最終評価の方法や効果的な事業についての情報を提供する必要がある。

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© 2007 日本公衆衛生学会
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