日本公衆衛生雑誌
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原著
児童の高齢者イメージに影響をおよぼす要因 “REPRINTS” 高齢者ボランティアとの交流頻度の多寡による推移分析から
藤原 佳典渡辺 直紀西 真理子李 相侖大場 宏美吉田 裕人佐久間 尚子深谷 太郎小宇佐 陽子井上 かず子天野 秀紀内田 勇人角野 文彦新開 省二
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2007 年 54 巻 9 号 p. 615-625

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抄録

目的 2004年 6 月より高齢者による学校ボランティア活動(絵本の読み聞かせ)を通じた児童との世代間交流型介入研究 “REPRINTS”(Research of Productivity by Intergenerational Sympathy)を開始した。対象児童の高齢者イメージの関連要因,および “REPRINTS” ボランティア(以下,ボランティアとよぶ)の 1 年間の活動により,対象児童の高齢者イメージがどのように変化したかを検証する。
方法 川崎市立 A 小学校(住宅地,児童数470人)を対象にボランティア 4~6 人が週 2 日訪問し,絵本の読み聞かせを継続した。ボランティア試験導入開始 1 か月後に初回調査,その後,6 か月ごとに第二回,第三回調査(集合・自記式アンケート)を行った。調査項目は,基本属性,SD (Semantic Differential)法による高齢者の情緒的イメージ尺度10項目短縮版(「評価性」因子 6 項目と「活動性・力量性」因子 4 項目),祖父母との同居経験,祖父母等の高齢者との交流経験(以降,高齢者との交流経験総得点とよぶ),ボランティアから読み聞かせをしてもらった経験(以降,読み聞かせ経験とよぶ),社会的望ましさ尺度短縮版。
結果 多重ロジスティック回帰モデルにより初回調査で「評価性」因子得点が高い(高齢者に対し肯定的なイメージをもつ)ことの関連要因は低学年,高齢者との交流経験総得点高値が,「活動性・力量性」因子得点が高いことの関連要因は低学年,男子,社会的望ましさ尺度短縮版高値が抽出された。
 次に,初回,第二回(6 か月後),第三回調査(12か月後)のうち,二回以上の調査で,「読み聞かせ,あり」と回答した児童を読み聞かせ経験の高頻度群(170人),一回以下の児童を低頻度群(175人)とし,これら二群の「評価性」因子と「活動性・力量性」因子の得点変化を一般化線形モデル(学年,性,高齢者との交流経験総得点,社会的望ましさ尺度短縮版を調整)により評価したところ,「評価性」因子の群間と調査回数に交互作用がみられた(P=0.012)。
結論 高齢者イメージは児童の成長とともに低下する可能性あるが,“REPRINTS” ボランティアとの交流頻度が高い児童では,1 年後も肯定的なイメージを維持しうることが示唆された。

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© 2007 日本公衆衛生学会
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