日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
公衆衛生活動報告
千葉県基本健康診査データ収集システム確立事業から得た特定健診への示唆
柳堀 朗子千葉県基本健康診査データ収集システム確立事業担当グループ
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 57 巻 12 号 p. 1075-1083

詳細
抄録

目的 市町村が実施している基本健康診査の個人データを健康指標として有効に活用するためには,検査値,判定基準等の標準化が必要である。そこで,市町村の基本健康診査結果を,連結可能匿名化 ID を付与し個人情報を削除した電子データで収集し,同一の標準物質を用いた外部精度管理による検査値の標準化,同一判定基準による判定を行うシステム構築を事業化し,5 年間のデータ収集を行った。特定健診により事業の当初目的はほぼ達成されたが,事業から得られた知見を特定健診に活かす視点で検討する。
方法 千葉県下の市町村より連結可能匿名化された基本健康診査の個人測定値を収集する事業を平成15年度に開始し,平成14年度から18年度の健診データを市町村の協力状況に応じて収集した。データは市町村において,県が開発した ID 付与プログラムを用いて連結可能匿名化をしてデータに付与し,個人情報を削除したものの提出を受けた。検診検査機関の測定値は標準物質チリトロール2000(千臨技検査値統一委員会認証精度管理試料)による標準化を図った。検査結果の判定は厚生労働省循環器判定基準に準拠した。
結果 平成14年度は16市町村より53,838件,18年度は22市町村より88,167件(男26,414件,女61,753件)の提供を受けた。作成した連結可能匿名化 ID は同一市町村内では重複がなかったが,全市町村の中では明らかに異なる個人に重複した ID が作成されていた。標準物質により検診機関の測定値を標準化した結果,測定値に補正が必要な測定項目はなかったが,値のバラツキが大きい項目がみられた。標準化した判定結果と基本健康診査結果の判定区分の構成割合の違いを市町村別にみると,血圧の判定は両者の違いは小さかったが,総コレステロールは同一基準で判定したほうが男女とも異常認めずの該当が少なく,女性では要医療の該当が高かった。血糖は同一基準の方が男女とも異常認めずの該当が多く,男性では要医療の該当が高かった。継続受診の状況をみると,約 7 割が 2 年間継続して受診し,5 年間継続受診したのは平成14年度受診者の45%であった。
結論 連結可能匿名化 ID 付与プログラムには不備があったが,本システムの運用により市町村から連結可能匿名化 ID を付与したデータを入手し,標準化された測定値,判定基準による地域の健康度評価は可能であると考えられた。しかし,測定値の経年比較においては,施設間の値のブレが大きい項目があるため,測定施設を考慮する必要があると考えられた。2 年間の継続受診率は約 7 割,5 年間では半数以下であり,特定健診の受診率確保においては継続受診の働きかけが重要であることが示唆された。

著者関連情報
© 2010 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top