日本公衆衛生雑誌
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原著
特定高齢者に対する運動及び栄養指導の包括的支援による介護予防効果の検証
深作 貴子奥野 純子戸村 成男清野 諭金 美芝藪下 典子大藏 倫博田中 喜代次柳 久子
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2011 年 58 巻 6 号 p. 420-432

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抄録

目的 本研究では,特定高齢者を対象とした介護予防教室において,運動と栄養による包括的なプログラムの提供が生活機能や体力に及ぼす介護予防効果を,運動に加えて栄養指導を実施した栄養介入群(運動+栄養群)と対照群(運動のみ群)の比較検討を行い明らかにすることを目的とした。
方法 茨城県 Y 町,S 市にて開催された,3 か月間の介護予防運動教室に参加した特定高齢者161人を対象とし,栄養介入群81人(Y 町•平均年齢76.2±5.7歳)と対照群80人(S 市•平均年齢76.2±4.7歳)の比較検討を行った。面接調査により,属性•日常生活動作(ADL)•生活機能(老研式活動能力指標)•食品摂取状況(食品摂取の多様性評価票)などを調査し,採血と体力測定(握力•ステップテスト•5 回椅子立ち上がり•開眼片足立ち•タンデムバランス•ファンクショナルリーチ(FR)•長座体前屈•5 m 通常歩行•タイムアップアンドゴー(TUG))を教室開始時と教室終了時に実施した。
結果 栄養介入群は,食品摂取の多様性得点が教室開始時に比べ教室終了時に有意に改善し(P<0.01),特に魚介類•肉類•卵•牛乳•果物類•油脂類(P<0.01),大豆製品•海草類•いも類(P<0.05)の計 9 食品の摂取頻度に良好な変化がみられた。一方,対照群は魚介類•肉類•牛乳のみに有意な変化がみられた。栄養介入群は,5 回椅子立ち上がり•タンデムバランス•FR•長座体前屈•TUG が教室開始時に比し教室終了時に有意な体力の向上がみられた。さらに,年齢•性別•教室開始時に群間差のあった体力測定項目で調整後も,開眼片足立ち(P<0.05)に両群間に有意差が認められた。
結論 運動に加え栄養指導を取り入れた介護予防教室では,特定高齢者の食品摂取状況の改善とともにより多くの体力の向上が認められた。栄養と運動を組み合わせた包括的なプログラムの提供が介護予防効果をより一層期待できることが示唆された。

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© 2011 日本公衆衛生学会
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