日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
青年女子の疲労自覚症状に関与する要因
池田 順子福田 小百合村上 俊男河本 直樹
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2011 年 58 巻 9 号 p. 793-804

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抄録

目的 青年期女子の健康評価の指標として疲労自覚症状を取り上げ,15年間に渡りその推移を把握し,かつ,疲労自覚症状に関与する要因を食生活,生活および身体状況から検討し,健康教育のための指標を得ることを目的とした。
方法 1994年~2008年の15年間,毎年10月に栄養系短期大学に在籍の 1 年生女子,毎年約100人,延べ総数1,547人(19.2±0.3歳)を対象として,身体•健康(疲労自覚症状30項目を含む),食生活および生活に関する86項目を調査,身体•活動に関する 5 項目を測定した。まず,疲労自覚数を中央値で 2 群に分け,疲労自覚の多い群の割合の年次推移を単回帰分析により検討,次いで,疲労自覚 2 群と各項目との関連を15年間および 5 年ごとの 3 期(94–98年,99–03年,04–08年)に分けて,平均値の比較,クロス集計による検討,さらに,疲労自覚に関与する要因を多重ロジスティック回帰分析により検討した。
結果 ①疲労自覚症状の多い割合は15年間で有意に増大する傾向を認めた。②調査,測定により得られた個々の項目と疲労自覚症状との関連を検討した結果,食べ方,塩分の取り方,生活の満足度,睡眠時間,ダイエット,住居,体型願望等の多数の項目で有意な関連が認められた。③疲労自覚症状にどの項目が強く関与しているかを検討するため,多重ロジスティック回帰分析を適用した。その結果,4 つ(15年および 3 つの期)すべての期で食生態スコアが高くなる(食べ方が好ましくなる)ほど,あるいは,生活に満足する群では満足しない群に比べ,疲労自覚症状の少ない割合が高いという関連が認められた。これら 2 項目以外では関与する要因は時期により少し異なるが,睡眠時間は 2 期目以外の 3 つの期で,ダイエット,塩分スコアは 2 つの期で,コーヒ•紅茶,ジュース飲料,油っぽいものの好み,夜食,体型願望,体型自己判定,健康の心がけは 1 つの期で取り上げられた。④食べ方を評価する食生態スコアは12項目から算出されるが,その中でも食べる分量,偏食,食べる速さ,簡便食品,規則的な食事時間,簡単な昼食の 6 項目が疲労と強く関わっていることがわかった。
結論 健康増進のためには食べ方に心を配る事,生活を満足と感じることや体格に対する正しい認識を持つこと等が必要であるという青年期女子の健康増進のための教育の視点が見いだせた。

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© 2011 日本公衆衛生学会
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