日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
「都市部版 地域包括支援センターへの情報提供のチェックシート」作成の試み
野中 久美子西 真理子小林 江里香深谷 太郎村山 陽新開 省二藤原 佳典
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2013 年 60 巻 10 号 p. 651-658

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抄録

目的 都市部の地域包括支援センター(以下,地域包括)が,在宅高齢者の身体•認知機能障害の重篤化防止と生活安定化支援のために,住民から情報提供を望む高齢者の特徴を記した実用性の高いツール「都市部版 地域包括支援センターへの情報提供のチェックシート」(以下,「情報提供のチェックシート」)を作成することを目的とした。
方法 予備調査として,首都圏 4 自治体(埼玉県和光市,神奈川県川崎市多摩区,東京都多摩市,東京都大田区)の地域包括職員29人を対象に,支援が必要と思われる高齢者の把握と支援導入における成功•失敗事例についてインタビュー調査を実施した。同調査で得られた支援が必要な高齢者の特徴と,他地域で活用されている既存のツールを参考にし,項目候補を選定した。
  本調査として,項目選定を目的とした自記式質問票調査を大田区の全20地域包括の職員109人を対象に実施した。まず,度数分布により各項目の通報必要性の支持率を確認した。次に,主因子法,プロマックス回転を用いた因子分析により項目の構成概念を検討した。通報必要性の支持率と因子分析での寄与率が高い項目を各因子から 2~4 項目選定した。最後に,選定した項目を大田区の地域包括職員20人に提示し,その項目が示す特徴に関する通報を希望するかについて尋ねた。
結果 有効回答であった90票を因子分析により分析した結果,『居宅の外観から気付く悪化』,『会話で気付く認知症』,『様子や発言から気付く体調不良』,『服装から気付く認知症』,『身嗜みから気付く認知症•体調不良』の5因子19項目が得られた。各因子の中で寄与率が高く,かつ通報の必要性が高いと支持された項目から順に選定し,14項目からなる「情報提供のチェックシート」を作成した。最後に,大田区の地域包括職員20人に対して,採択した14項目を提示し,項目が地域包括の通報希望と一致していることの確認ができた。
結論 都市部の地域包括にとって,支援が必要な高齢者の早期把握に有用な高齢者の特徴14項目を提示することができた。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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