日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
保健所の性感染症相談・検査事業のクラミジア検査における病原体検査の意義
羽鳥 徹中村 多美子津久井 智
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2013 年 60 巻 11 号 p. 691-696

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抄録

目的 性器クラミジア感染症の診断は,臨床的には直接病原体の検出によるが,保健所の性感染症相談•検査では血清を用いた抗体検査が用いられることが多い。今回,保健所性感染症相談•検査来所者を対象に血清クラミジア抗体と尿中のクラミジア病原体検査結果を比較し,保健所におけるクラミジア病原体検査の有用性を検討した。
方法 保健所の性感染症相談•検査に来所した匿名の120人(男性64人,女性56人)を対象に実施した血清抗体検査と strand displacement amplification(SDA)法による尿中の病原体検査を比較した。女性の病原体検査の検体は,子宮頸管擦過物と同等の感度をもつと報告されている尿を用いた。血清抗体検査は ELISA 法を用い,IgA 抗体,IgG 抗体の少なくとも一方が陽性の場合に抗体陽性と判定した。
結果 血清抗体陽性率は24.2%(男性14.1%,女性35.7%),SDA 法陽性率は7.5%(男性3.1%,女性12.5%)で,両検査の一致率は81.7%で,κ 統計量は0.35(95%CI:0.10–0.59)であった。SDA 法陽性者 9 人のうち IgA 陽性は 1 人,IgG 陽性は 6 人,両者ともに陽性 1 人で,1 人は抗体陰性であった。SDA 法陰性者111人のうち IgA 陽性は 8 人,IgG 陽性は 5 人,両者ともに陽性は 8 人であり,IgA 抗体とクラミジア病原体の有無に関連は認められなかった。クラミジア感染の既往歴のある者はない者に比較して抗体陽性率が高かったが(P<0.01),病原体陽性率に差はなかった。
結論 保健所の性感染症相談•検査のクラミジア検査は,検体採取が容易な血清抗体検査が利用されることが多いが,病原体検査を積極的に導入するべきであることが示された。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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