2013 年 60 巻 5 号 p. 294-301
目的 本来 6 件法である日本語版 WHO–5 精神健康状態表(以下,WHO–5–J)を,4 件法で評価する簡易版(Simplified Japanese version of WHO–Five well-being index,以下,S–WHO–5–J)を作成し,信頼性と妥当性を検討した。
方法 対象は東京都 C 区在住の65歳以上の高齢者4,439人。平均年齢および SD は74.2±6.6歳で,女性は2,475人(55.8%)であった。全員に対し自記式質問紙調査を郵送し,3,068票が回収された(回収率69.1%),このうち,S–WHO–5–J,GDS–15,年齢,性別,同居者の有無,介護状況,主観的健康感,痛み,主観的記憶障害,老研式活動能力指標,ソーシャルサポート,閉じこもり,経済状況の項目に欠損値のなかった1,356人(平均73.2±5.8歳,女性の比率51.1%)を分析対象とした。補足的分析として他調査における対象者2,034人の WHO–5–J のデータを用いて,欠損値数の比較を行った。
結果 S–WHO–5–J は,1 因子構造が確認され,合計得点と項目との相関(0.79∼0.87),項目間の相関(0.52∼0.82),α係数(0.889)がともに高かった。また,既存の精神的健康尺度である GDS–15 や精神的健康項目との関連,精神的健康に影響すると考えられる諸要因,すなわち,身体機能(運動器,転倒,栄養,口腔),主観的記憶障害,日常生活の自立度,社会機能(閉じこもり,対人交流,ソーシャルサポート)との間に関連が認められた。加えて,補足的分析から,S–WHO–5–J では WHO–5–J よりも欠損値が少ないことが示された。
結論 S–WHO–5–J は,十分な信頼性と妥当性を有していることが確認された。大規模な地域高齢者サンプルを対象に精神的健康を測定する尺度としてより利便性の高い尺度であると考えられた。