日本公衆衛生雑誌
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原著
コミュニティセンター「かながわレインボーセンター SHIP」の夜間 HIV/STIs 即日検査相談を受けた MSM(men who have sex with men)の特徴及び罹患率
井戸田 一朗星野 慎二沢田 貴志佐野 貴子上田 敦久加藤 真吾今井 光信
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2013 年 60 巻 5 号 p. 253-261

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抄録

目的 かながわレインボーセンター SHIP が実施した,men who have sex with men(MSM)向けの human immunodeficiency virus(HIV)および sexually transmitted infections(STIs)検査相談を受検した MSM の特徴と陽性率を明らかにし,その HIV 罹患率を推定する。
方法 2008年 1 月から2011年12月の間に,当センターで実施した夜間無料匿名即日 HIV/STIs 検査相談のべ585件(449人)に対し,585件の検査記録および受検者に対して実施した筆記アンケートのデータを分析した。HIV/STIs 検査には,ダイナスクリーン®による HIV 抗体,Treponema pallidum 抗体,HBs 抗原の迅速検査を用いた。複数回受検した82人の MSM を対象に,人年法により HIV 罹患率を算出した。
結果 当センターにおける検査相談を新規に受検した MSM は423人で,最多年齢層は25–29歳代24.6%,神奈川県内居住者は78.5%,生涯で初めて HIV 検査を受検した者は30.5%であり,過去 6 か月のアナルセックスにおけるコンドーム常用率は44.9%であった。検査結果が陽性であったのは,HIV 13人(3.1%),梅毒 TP 抗体43人(10.2%),HBs 抗原 7 人(1.7%)であった。新規に受検した MSM の中で,その後複数回にわたり受検した MSM は,再受検しなかった MSM と比較し,年齢層,居住地,HIV 検査の受検経験有無,コンドーム常用率に有意差を認めなかった。複数回受検した MSM は82人であり,HIV 罹患率は,1.00/100人年(95%信頼区間:0.00–5.58)であった。HIV 陽性者全員がエイズ治療の拠点病院に受診したことを確認した。
結論 神奈川県内に在住し HIV/STIs 感染リスクを有する MSM が,当センターにおける検査相談を利用した。HIV 陽性率は,従来の都市部における MSM 向けの HIV/STIs 検査イベントでの陽性率と同等で,保健所での陽性率に比べて高かった。HIV 罹患率は,MSM 向け HIV/STIs 検査イベントにおける陽性率およびエイズ発生動向年報を用いて推定した報告の値と同等であった。HIV/STIs 感染リスクの高い MSM を対象とした HIV 検査機会を保健所以外に確保し継続することは,他の都市部においても有用であると考えられた。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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