日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
群馬県草津町における介護予防10年間の歩みと成果
新開 省二吉田 裕人藤原 佳典天野 秀紀深谷 太郎李 相侖渡辺 直紀渡辺 修一郎熊谷 修西 真理子村山 洋史谷口 優小宇佐 陽子大場 宏美清水 由美子野藤 悠岡部 たづる干川 なつみ土屋 由美子
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2013 年 60 巻 9 号 p. 596-605

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抄録

目的 群馬県草津町と東京都健康長寿医療センター研究所は,2001年から2011年に至る10年間,地域における介護予防の取り組みを通じて,高齢者の健康余命の延伸,介護保険•医療保険の安定的運営,さらには全国に「介護予防•草津モデル」を発信することを目的とした共同研究を行ってきた。本活動報告は,両者がどのように考えて草津町における介護予防を進めてきたのか,その経緯を紹介するとともに,これら取り組みによって高齢者の健康度が向上したのかどうかを明らかにし,もって今後の地域における高齢者保健のあり方を考察することを目的とした。
方法 この10年間,同町において介護予防のポピュレーション戦略とハイリスク戦略の双方を重視した地域包括的な介護予防推進システムを構築し,そのシステムによって出来るだけ多くの地域高齢者がカバーできるよう努めた。健康教育では,健康長寿の三本柱である栄養,体力,社会参加の重要性を繰り返し強調した。また,高齢者向け健診に新たに総合的機能評価を取り入れ,要介護リスクの高い人に介護予防事業への参加を勧奨した。介護予防事業では複合的プログラムを提供し,事業終了後も自主グループとして活動を継続するよう支援した。
結果 二年に一度のモニタリング調査の結果,高齢者の健康余命は順調に伸び,とくに女性では顕著な延伸がみられた。生活機能の自立度の指標である総合的移動能力と高次生活機能も向上した。介護保険統計を分析した結果,新たに要介護認定を受ける者の発生率は減少し,介護保険認定率は全国のみならず群馬県よりも低い水準を保ち,その差は近年ほど拡大している。とくに,後期高齢者における介護保険認定率の低下が顕著であった。
結論 過去10年間の地域における介護予防の取り組みにより,草津町高齢者の健康余命が伸びるとともに,後期高齢者の介護保険認定率が低下し,介護保険財政が安定化してきた。今後,介護予防のターゲットは,後期高齢期の虚弱化予防におかれるべきであろう。住民主体を基本にして,日常の生活圏域に後期高齢者向けの健康づくりの場を整備することが望まれる。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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