日本公衆衛生雑誌
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原著
レセプト情報・特定健診等情報データベースを利用した滋賀県における循環器疾患危険因子の有病率,治療率,コントロール率
宮川 尚子村上 義孝岡山 明角野 文彦三浦 克之
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2014 年 61 巻 7 号 p. 333-341

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抄録

目的 生活習慣病の予防戦略立案において,循環器疾患危険因子の有病率,治療率およびそのコントロール率を性・年齢別に詳細に実態把握することは公衆衛生上重要である。高齢者の医療の確保に関する法律に基づく「レセプト情報・特定健診等情報データベース」の研究利用が可能になったことに伴い,滋賀県の特定健診全受診者における高血圧,糖尿病および高 LDL コレステロール血症の有病率,治療率およびコントロール率を明らかにする。
方法 滋賀県在住の平成20年度特定健診受診者全員を対象者とし,本データベースにおける特定健診に関する提供データを用い,性・年齢別(5 歳階級)に高血圧,糖尿病,高 LDL コレステロール血症の有病率,治療率,コントロール率およびその95%信頼区間を算定した。コントロール率は,高血圧,糖尿病,高 LDL コレステロール血症治療者のうち,検査値が基準値未満の者の割合とした。
結果 滋賀県在住の平成20年度特定健診受診者は211,976人であった。高血圧では男女ともに有病率(男性16~60%,女性 6~58%)と治療率(男性23~71%,女性24~71%)は年齢上昇に伴い増加したが,コントロール率は約55%で年齢による違いがなかった。糖尿病では,男女の有病率(男性 3~15%,女性 1~10%)と男性の治療率(44~62%)は年齢上昇に伴い増加し,コントロール率も男性で43~51%,女性で32~50%と緩やかに増加した。高 LDL コレステロール血症では女性の有病率(16~57%)と男女の治療率(男性 6~44%,女性 6~51%),コントロール率が年齢上昇に伴い増加し,コントロール率は男性で63~80%,女性で64~77%と高い値を示した。
結論 レセプト情報・特定健診等情報データベースの特定健診データの活用により循環器疾患危険因子の有病率,治療率の詳細把握が可能になるとともに,これまで報告がなかったコントロール率が明らかとなり,本データベースは生活習慣病の実態把握に有効に利用できることが示された。

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© 2014 日本公衆衛生学会
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