抄録
目的 患者の医療に対する不満足は多様な要因によって引き起こされ,それらは医療の受け手である患者側の要因と提供者である医療施設側の要因に大別される。医療施設側の要因が患者満足度に与える影響を調べたものは少ないため,本研究では平成23年受療行動調査に含まれる患者満足度に着目し,検討を行った。
方法 平成23年受療行動調査,平成23年患者調査および平成23年医療施設調査を突合したデータベースの解析を実施した。受療行動調査の全体的満足度を用い,アウトカムは患者満足度での不満とした。医療施設側の要因は医療施設調査項目を用い,患者側の要因は患者調査の性別,年齢,傷病コードを用いた。解析は外来・入院患者別に実施し,病院種を変量効果として異質性を考慮したロジスティック混合効果モデルを用いて,不満割合と医療施設項目との関連を検討した。
結果 解析対象者数は外来患者が27,842人,入院患者が17,770人であった。外来患者において,患者の不満と統計的に有意であった項目は開設者(P<0.001),受動喫煙防止対策(P<0.001),新人研修の有無(P=0.002)であった。入院患者において,患者の不満と統計的に有意であった項目は,開設者(P=0.037),受動喫煙防止対策(P<0.001),緩和ケアチーム(P=0.001),新人研修(P=0.013)であった。病院種の違いによる異質性は外来・入院ともに小さかった。
結論 患者の不満は受動喫煙防止対策,緩和ケアチームの有無,新人研修の有無などと有意に関連していた。これら項目は病院の医療環境改善を示す項目であり,病院における患者満足度を向上させる重要な因子であると推察された。