日本公衆衛生雑誌
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原著
埼玉県在住一人暮らし高齢者の食品摂取の多様性と食物アクセスとの関連
吉葉 かおり武見 ゆかり石川 みどり横山 徹爾中谷 友樹村山 伸子
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2015 年 62 巻 12 号 p. 707-718

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抄録

目的 地域在住一人暮らし高齢者を対象に,食品摂取の多様性と食物アクセスとの関連を明らかにすること。
方法 2013年 9 月に,埼玉県 A 市在住の65歳以上89歳以下の高齢者のうち,住民基本台帳上一人暮らしの全高齢者4,348人を対象に郵送法による自記式質問紙調査を実施した。属性,健康状態,食品摂取の多様性評価票,食物アクセス(主観的食料品店アクセス等)や食行動等を尋ね,2,591人より回答を得た(回収率59.6%)。食品摂取の多様性評価票は,10食品群について摂取頻度「毎日」の場合を 1 点とし,10点満点で食物摂取の多様性を定性的に捉える指標であり,高齢者の自立度や健康状態との関連が明らかにされている。食物アクセスの指標には,地理情報システム(GIS)による客観的指標等も用いた。実質一人暮らしでない者等を除外した1,043人(男性452人,女性591人)を解析対象とし,食品摂取の多様性得点 2 群間(3 点以下:低群,4 点以上:高群)で食物アクセス,食行動等について単変量解析にて関連を検討した。その後,食品摂取の多様性得点群を従属変数,単変量解析で有意な関連のみられた食物アクセス等の要因を説明変数とし,年齢,年収,暮らし向き,最終学歴,フレイル評価を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。
結果 1. 食品摂取の多様性得点 2 群は,男性は高群107人(23.7%),低群345人(76.3%),女性は高群263人(44.5%),低群328人(55.5%)であった。2. 多重ロジスティック回帰分析の結果,男女ともに食物摂取の多様性得点群と有意な関連がみられたのは主観的食料品店アクセスで,「少し大変,とても大変」と感じる者は,「とても容易」と感じる者に比べて食品摂取の多様性得点が 3 点以下(低群)となるオッズ比(95%信頼区間)が男性4.00(1.36–11.82),女性2.24(1.11–4.51)であった。また,女性ではソーシャルサポート(近所や親戚から,食物をもらうこと)ならびに食行動の夕食の準備(自分で作って食べるか)についても有意な関連がみられた。GIS を用いた客観的食料品店アクセスとは,有意な関連はみられなかった。
結論 一人暮らし高齢者の食品摂取の多様性得点には,「買い物が大変」と感じる主観的食料品店アクセスの関連が強いことが明らかとなった。また,女性のみで,ソーシャルサポートと食事作りが関連していることが示唆された。

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