日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
精神障がい者家族ピア教育プログラムの実施プロトコル遵守に関する尺度開発:フィデリティ尺度
蔭山 正子大島 巌中村 由嘉子横山 恵子小林 清香
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2015 年 62 巻 4 号 p. 198-208

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抄録

目的 精神障がい者の家族ピア教育プログラム「家族による家族学習会」が全国に普及し始めている。プログラム遷移を防止し,提供されるプログラムの質を担保するために,効果的援助要素を包含したフィデリティ尺度を開発することを目的とした。
方法 まずフィデリティ項目案を作成した。次に,プログラム実施場所でマニュアルに忠実に実施できるよう支援・助言するアドバイザー72人を対象として,2013年 6~7 月に自記式質問紙調査を行い,フィデリティ項目案の必要度や意見を把握してフィデリティ項目を作成した。2013年度はアドバイザーがプログラムの第 1 回目に実施場所を訪問し,フィデリティ項目を採点した。2013年10月から年度内にプログラムを終了した38か所でプログラム最終回に自記式質問紙調査を行った。アウトカム指標は Client Satisfaction Questionnaire 8 項目版,Group Benefit Scale,Therapeutic Factors Inventory-19を用いた。フィデリティ項目の回答分布,項目間の相関,アウトカム指標との関連を検討した。
結果 フィデリティ項目案は,実施回数や実施時間などの基本的構造(9 項目)とグループ進行に関連するプロセス(21項目)の 2 ドメインで構成した。アドバイザーを対象とした調査は47人から有効回答を得て,基本的構造(8 項目)とプロセス(5 サブドメイン20項目)で構成するフィデリティ項目を作成した。アドバイザーから提出された36か所のフィデリティ項目の点数を分析し,プロセス項目間で Spearman 相関係数が0.5以上の項目を集めてサブドメインとした。サブドメインは,全体の発言を重視した「全体で話し合う進行」,同じ家族による「ピアのおもてなし」,対等な発言を重視した「ピアグループの進行」,参加者の肯定的側面に着目した「肯定的フィードバック」の 4 つだった。収束的・弁別的相関係数による尺度化成功率は100%だった。
 プログラムの最終回にいた386人のうち283人からアウトカム指標に関する質問紙が返送された。フィデリティ項目のうち,基本的構造 8 項目すべてがいずれかのアウトカム指標と P<0.1の関連を示した。プロセスのサブドメインのうち「肯定的フィードバック」以外はいずれかのアウトカム指標と P<0.1の関連がみられた。
結論 基本的構造(8 項目)とプロセス(4 サブドメイン)の 2 つのドメインで構成するフィデリティ尺度を開発した。尺度は一定程度の妥当性が確認された。本尺度を活用することによってプログラム遷移を防ぎ,一定の質を担保したプログラムの提供に役立つと考えられる。

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© 2015 日本公衆衛生学会
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