日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
原著
医療等分野における番号制度導入への医師を対象にした意識調査
高橋 由光瓜生原 葉子井上 真智子岡本 茂柏原 英則鬼頭 久美子篠原 圭子萬代 真理恵森岡 美帆田中 司朗川上 浩司中山 健夫
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 62 巻 7 号 p. 325-337

詳細
抄録

目的 マイナンバー制度が2013年に成立し,医療等分野における番号制度(医療等 ID)が検討されている。しかし,医師が抱いている医療等 ID 導入への問題意識は明らかになっていない。医療等 ID 導入に対する医師の賛否および特徴を明らかにすること,医師が医療等 ID 導入に対して抱いているメリット・デメリットを明らかにすることを目的とした。
方法 医師を対象としたインターネット調査による横断研究である。有意抽出サンプルである調査パネル医師会員より 4 群(病院勤務45歳未満,病院勤務45歳以上,診療所勤務45歳未満,診療所勤務45歳以上)で層別サンプリングを行った。主要評価項目は,医療等 ID 導入賛否であり,医療等 ID のメリット・デメリットに対する回答を自由記述で収集した。4 群別に医療等 ID 導入賛否の割合を算出し,多重ロジスティック回帰分析にて医療等 ID 導入賛否に関連する要因を検討した。メリット・デメリットの回答に対して質的内容分析を行った。
結果 回答者は562人(回答率68%)。医療等 ID を「必要だと思わない」人は,各群16/143人(11%),25/138人(18%),31/132人(23%),43/149人(29%)であった。「必要だと思わない」人に有意に関連した項目は,年齢(5 歳ごと)(オッズ比[95%信頼区間]:1.14 [1.01-1.29]),勤務医療機関(診療所勤務)(1.99 [1.30-3.08])であった。メリットとして,情報の一元化により医療機関業務の軽減および医療機関の連携による不適切な受診行動の抑制が行われ,医療費の削減,個々の患者のための医療の実現が行われることが挙げられていた。デメリットとして,情報の連携およびビッグデータ時代に対応することで,情報漏えい対策・情報管理作業の増加,連携情報に拘束される医師,連携情報の不適切な利用が挙げられ,医療サービスの悪化にもつながりかねない。連携すべきでない情報もあり,プライバシーに関する倫理的配慮が不可欠である。
結論 医療等 ID を不必要と考える医師は 1-3 割であり,年長者,診療所勤務という特徴があった。医療費の削減,個々の患者のための医療の実現につながるメリットがある半面,情報漏えい対策,医師が連携情報に拘束される危険性,連携情報の不適切な利用等のデメリットもある。情報を保護しながら利活用するためには,倫理的配慮が不可欠である。医療等 ID 導入には,医師の特徴・意識を考慮しつつ,情報の利活用目的に応じた利活用可能な情報の種類とその提供対象に関する社会的合意形成が求められる。

著者関連情報
© 2015 日本公衆衛生学会
次の記事
feedback
Top