日本公衆衛生雑誌
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原著
都道府県の精神保健福祉相談員が市町村に行う技術支援の構造とその特性
岡田 隆志
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2017 年 64 巻 10 号 p. 607-618

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抄録

目的 精神保健福祉領域において都道府県による市町村への支援の必要性が高まっているなか,都道府県の精神保健福祉相談員(以下,相談員)は市町村の地域精神保健福祉活動の推進や職員の支援力の向上を目指して,技術的な支援を行ってきた。本研究ではその相談員が,市町村に行う技術支援の構造とその特性を実証的に明らかにすることを目的とする。

方法 調査対象は,都道府県の勤務年数10年以上の精神保健福祉士とし,直近5年以内に市町村への技術支援を経験していることを条件とした。調査方法は「全国精神保健福祉相談員会」の会員から無作為抽出した7人を対象に,個別の半構造化面接を行った。内容は①個別相談と②精神保健福祉関連事業の事例を聴取し,分析はコンサルテーションの実施過程を分析枠組みとし,質的内容分析を行った。

結果 分析の結果,37のコードから5のカテゴリー< >,15のサブカテゴリー【 】を生成した。技術支援の構造は,まず市町村との<関係づくり>では【相補的な関係】【パートナーとしての関係】となり,それから【目前の現場から分析・判断する】【蓄積された根拠から分析・判断する】といった<多面的な情報から分析・判断>を行っていた。その上で,<支援方針の策定>がなされ,【課題解決や取り組み促進のための動きをとる】【当事者主体でかかわる意識を醸成する】【住民の理解につながる気づきを促す】【職員の心理的な支えとなる】【行政責任の明確化を図る】【環境の改善や促進のための調整をする】の6つが重視されていた。<支援の手立て>には【側面的に実施する】【主体的・協働的に実施する】の方法があり,支援後の<評価>では【実施体制の維持や向上が図られる】【職員の喜びや地域の満足をもたらす】【地域に汎用できるかを吟味する】が意識されていた。技術支援の特性は,コンサルテーション機能に加え,住民サービスを提供する地域責任性をもつ都道府県機関として,相補性や協働性を活かした支援機能を併せ持っていることが示唆された。

結論 本研究ではこれまで明らかにされていなかった技術支援の構造について具象化し,その特性を示した。今後は,地域での実践の均てん化に向けて,技術支援のノウハウの蓄積を重ね,支援方法が確立されることが望まれる。

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