日本公衆衛生雑誌
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原著
基本チェックリストと健診データを用いた縦断研究に基づく要支援・要介護リスク評価尺度の開発
辻 大士高木 大資近藤 尚己近藤 克則
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2017 年 64 巻 5 号 p. 246-257

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抄録

目的 本研究は,市が保有する基本チェックリストと健康診断(以下,健診),約4年間の要支援・要介護認定データを結合し,その認定を予測するための要支援・要介護リスク評価尺度を開発することを目的とした。

方法 K市(政令指定都市)に在住し,2011年に基本チェックリストへの回答が得られた72,127人の高齢者を分析対象とする後ろ向きコホート研究を実施した。基本チェックリストのうち,第7期の介護予防・日常生活圏域ニーズ調査(以下,ニーズ調査)の必須項目12項目とオプション項目7項目に,2011年の健診データ(受診の有無,血圧・血液生化学検査5項目)と2011~15年の要支援・要介護認定情報を結合した。新規要支援・要介護認定をエンドポイントとする4つのCox比例ハザードモデル— 1) 性,年齢,必須項目12項目,2) 1)+オプション項目7項目,3) 2)+健診受診の有無,4) 3)+健診6項目をそれぞれ説明変数とし,変数増加法を用いて分析した。選択された各項目に対し,非標準化偏回帰係数(B)を基に点数を割り当て,それらを合計する「要支援・要介護リスク評価尺度」を作成した。各評価尺度の予測妥当性を比較するため,receiver operating characteristics(ROC)解析を実施し,感度・特異度を算出した。

結果 最長4年2か月の追跡期間中に11,039人(15.3%)が新たに要支援・要介護認定を受けた。性,年齢とニーズ調査の必須項目10項目から,0~55点の幅となる評価尺度が作成された。合計点数ごとの新規認定割合は,10点:3.2%,20点:14.7%,30点:31.6%,40点:56.7%,50点:75.0%であった。ROC曲線の曲線下面積は0.783であり,カットオフを20/21点とした場合,感度0.705,特異度0.731であった。ニーズ調査のオプション項目や健診項目を含めた評価尺度であっても,それらの値はほとんど変わらなかった(曲線下面積:0.786~0.787,感度:0.721~0.730,特異度:0.710~0.717)。

結論 健診データを含めなくとも,基本チェックリスト10項目(ニーズ調査の必須項目に含まれる)から作成した評価尺度が,要支援・要介護認定リスクの予測評価に有用であることが示唆された。各保険者が保有する基本チェックリストまたは今後収集するニーズ調査データを活用し,個人レベルや地域レベルのリスクの予測評価が可能な要支援・要介護リスク評価尺度が開発できた。

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© 2017 日本公衆衛生学会
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