日本公衆衛生雑誌
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総説
風力発電等による低周波音・騒音の健康影響:疫学文献レビュー
久保 達彦蓮沼 英樹森松 嘉孝藤野 善久原 邦夫石竹 達也
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2017 年 64 巻 8 号 p. 403-411

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抄録

目的 環境負荷の少ないクリーンなエネルギーとして,風力発電の導入が先進国を中心に世界各国で進んでいる。一方で,風力発電施設からの低周波音・騒音に関して近隣住民の健康被害の訴えが報告されており,わが国においても風車騒音に係る基準やガイドライン策定の検討が行われている。そこで本研究では,今後,健康影響を考慮にいれた低周波音・騒音基準の設定を行う上で参考となる知見を明らかにすることを目的に,風力発電風車の近隣住民を対象にした疫学研究について文献レビューを実施した。

方法 風力発電風車からの騒音に伴う健康影響に関する疫学研究論文を,PubMEDを用いて収集した。また最新の情報を収集するために関連国際学会Inter-Noise 2013, Wind Turbine Noise 2015の抄録からも追補的に情報を得た。抽出された疫学研究論文を研究デザイン,研究対象者,曝露評価,アウトカム,交絡要因および研究結果に関する情報別に整理しエビデンステーブルを作成した。

結果 近隣住民を対象とした疫学研究として11件が抽出された(うち2件は国際学会抄録)。アウトカムとして,騒音の知覚(Perception),アノイアンス(Annoyance:騒音によるうるささ),ストレス,睡眠との関連が報告されていた。風車騒音とアノイアンス,主観的評価に基づく健康指標の間には統計的に有意な関連が繰り返し報告されていた。影響の大きさは,A特性音圧レベル1 dB増加あたりオッズ比1.1程度と2つの研究が報告していた。その他のアウトカムでは影響の大きさに関して研究間比較ができなかった。交絡因子として,風力発電への姿勢,景観に対する姿勢,風力発電からの経済的恩恵,風車の可視性,音への感受性,健康への懸念との影響が報告されていた。

結論 風力騒音とアノイアンスについては,主観的評価に基づく健康指標の間には統計的に有意な関連が繰り返し報告されていた。ただし,アノイアンスが風力発電施設建設に対する心理的影響なのか,騒音曝露による心理的影響なのかについて,現状のエビデンスにおいてはその区別が明確にはつけられない状況であった。

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