日本公衆衛生雑誌
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中高年者における「日本語版Ten-Item Personality Inventory」(TIPI-J)の標準値ならびに性差・年齢差の検討
岩佐 一吉田 祐子
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2018 年 65 巻 7 号 p. 356-363

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抄録

目的 本研究は,日本全国に居住する中高年者を対象とした標本調査を行い,「ビッグファイブ理論」(神経症傾向,外向性,開放性,協調性,勤勉性)に基づく簡易性格検査である「日本語版Ten-Item Personality Inventory」(TIPI-J)の中高年者における粗集計表の作成,標準値の報告,性差・年齢差の検討を行った。

方法 日本全国に在住する中高年者(60~84歳)1,200人を無作為抽出して郵送調査を行い,849人から回答を得た(参加割合70.8%)。このうち,TIPI-Jに欠損のない者776人(男性368人,女性408人)を分析の対象とした。TIPI-J(10項目,7件法)のほか,居住形態(独居),教育歴(義務教育),経済状態自己評価,有償労働,健康度自己評価,主観的幸福感(WHO-5-J;5項目,6件法),高次生活機能(老研式活動能力指標;13項目,2件法)生活習慣病(脳卒中,心臓病,糖尿病,がん),総合移動能力,飲酒,喫煙の習慣を測定した。TIPI-Jの,①粗集計表の作成,②標準値(平均値,99%信頼区間,標準偏差)の報告,③性差ならびに年齢差の検討を行った。

結果 TIPI-Jにおけるいずれの因子も概ね正規分布に近い形状を示した。神経症傾向では女性の方が男性よりも平均値が大きかった。開放性では男性の方が女性よりも平均値が大きかった。いずれの因子にも年齢差は認められなかった。

結論 本研究は,一定程度の代表性が担保されたデータを用いて,TIPI-Jにおける,粗集計表の作成,標準値の報告,性差・年齢差の検討を行った。今後は,健康アウトカムを外的基準としてTIPI-Jの関連要因,予測妥当性の検証を行い,地域疫学調査等での有用性を確認することが課題である。

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© 2018 日本公衆衛生学会
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