日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
資料
国民健康・栄養調査の非協力者を同定するための国民生活基礎調査とのレコード・リンケージにおけるキー変数の組合せに関する検討
池田 奈由西 信雄
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 66 巻 4 号 p. 210-218

詳細
抄録

目的 国民健康・栄養調査(以下,栄養調査)の非協力者を同定するためには,国民生活基礎調査(以下,基礎調査)から得られる親標本とのレコード・リンケージが必要である。レコード・リンケージは原則として,被調査者に割り振られた世帯番号等のキー変数により行われるが,誤った連結および非連結が発生する場合がある。本研究では,栄養調査の非協力者を同定するためのレコード・リンケージのキー変数の組合せについて検討した。

方法 1988~2015年(2012年除く)の基礎調査と栄養調査の個人データを用いて,栄養調査協力単位区における基礎調査協力者(栄養調査時点の0歳児を除く)と栄養調査協力者のレコード・リンケージを行った。キー変数の組合せには,「都道府県番号,地区番号,単位区番号,世帯番号,世帯員番号」(A),Aから世帯員番号を除き性別,出生年月または年齢を追加(B),Aに性別,出生年月または年齢を追加(C),BとCの二段階(D)の4通りを用いた。連結された協力者,連結されなかった基礎調査協力者(栄養調査非協力者とみなす),連結されなかった栄養調査協力者の3群に分類し,栄養調査協力者の連結率および基礎調査協力者の非連結率を,4通りの組合せの間で比較した。

結果 レコード・リンケージの対象となった基礎調査協力者は455,854人,栄養調査協力者は335,010人であった。調査年別の栄養調査協力者の連結率は,A(90%台後半),D(90%台前半),B(90%台前半),C(80%台)の順に高かった。Cに比べてAは8~14%ポイント,Bは5~10%ポイント高く,Bに比べてDは0.1~0.4%ポイント高かった。基礎調査協力者の非連結率は,C,B,D,Aの順に高く,Dでは1990年以前に20%台前半,1990年代に30%前後,2000年代に30%台~40%前後で推移した。

結論 キー変数の組合せにより,連結結果に差異があった。世帯員番号の変更や性別または出生年月,年齢の誤入力,同性の複産児の重複を考慮した二段階のレコード・リンケージにより,最も多くの栄養調査協力者を正確に連結できた。ただし,さらに世帯番号が変更された場合等への対応には限界がある。連結されなかった基礎調査協力者を栄養調査の非協力者とみなす際には,誤った連結結果が依然として存在する可能性があることに留意する必要がある。

著者関連情報
© 2019 日本公衆衛生学会
前の記事
feedback
Top