日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
歯科における禁煙支援に伴うニコチン依存度および口腔内の経時的変化
田野 ルミ三浦 宏子尾﨑 哲則
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2019 年 66 巻 5 号 p. 246-251

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抄録

目的 本研究の目的は,歯科臨床での継続的な禁煙支援活動がニコチン依存度と舌苔,味覚,口臭,唾液にどのような影響を及ぼすか,追跡調査により明らかにすることである。

方法 対象は,首都圏にかかりつけ歯科医をもち喫煙習慣を有する14人とした。歯科診療所での禁煙支援に加えて喫煙状況の把握,ニコチン依存度および口腔に関する評価を行った。調査は,医科における禁煙治療の日程に準拠して禁煙支援開始日である初回,初回から2週間後,4週間後,8週間後,12週間後の合計5回実施した。禁煙支援は,歯科衛生士が「禁煙支援教材(日本歯科医師会)」を用いて個別に行った。ニコチン依存度は主要な判定法であるFagerström Test for Nicotine Dependence, Tobacco Dependence Screener, Kano Test for Social Nicotine Dependenceについて自記式にて回答を得た。口腔に関する評価は,①視診による舌苔付着範囲,②舌滴下法による味覚閾値(甘味・塩味),③呼気中の揮発性硫黄化合物濃度,④pHメータを用いた唾液pH値の4項目とした。各調査回におけるニコチン依存度および口腔に関する評価の比較を行うため,Friedman検定および多重比較検定を行った。

活動内容 中断者2人を除く12人(男性8人,女性4人)を分析対象とした。これらの12人において,禁煙支援後12週間の時点で禁煙に至った者はいなかった。しかし,禁煙支援後12週間の喫煙本数は,禁煙支援開始時と比較して大きく低減した。ニコチン依存度および口腔に関するすべての評価項目についても,調査回間に有意差が認められた(P<0.001)。次いで,Bonferroniの方法による多重比較検定を行った結果,ニコチン依存度,舌苔付着範囲,味覚閾値,揮発性硫黄化合物濃度が初回に比べて12週後に有意に低下した。唾液pH値は,初回に比べて12週後に有意に上昇した。

結論 歯科における12週間の禁煙支援活動は,喫煙本数の減少,ニコチン依存度の低下,そして舌苔,味覚,口臭,唾液の状態に良好な影響を及ぼすことが示唆された。

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