日本公衆衛生雑誌
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原著
保育士による発達上「気になる子」の保護者への支援の実態と関連要因の探索:発達上の課題の伝達に着目して
佐藤 日菜田口 敦子山口 拓洋大森 純子
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2019 年 66 巻 7 号 p. 356-369

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抄録

目的 発達障害は,認知,言語,運動,社会技能の獲得に障害を持つため,できる限り早期に発見し,本人に合わせた援助を考えていく必要がある。こうした中,支援体制の一翼を担うのが,保育所保育士である。そこで,本研究は,保育士による発達上気になる子の保護者への支援の実施状況と支援の実施に関連する要因を明らかにし,保護者への支援を推進するために必要な対策を検討することを目的とした。

方法 A県内の6市町の全認可保育所の施設管理者および保育士を対象に,アンケート調査を行った。施設管理者には,施設の要因として保育所の体制や,気になる子の保育のための取り組み等について尋ねた。保育士には,保育士の要因として気になる子および保護者への支援に関する知識・態度や,施設内外との連携状況等を尋ねた。また,担当している気になる子を挙げてもらい,その一人一人について保護者への支援状況について尋ねた。保護者への支援の実施の関連要因を検討するために,施設要因,保育士要因を独立変数,保護者への支援の有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析の強制投入を行った。

結果 気になる子は,合計567人であり,発生割合は10.8%であった。気になる子の保護者への支援の実施割合は,「意識的な関係づくり」は73.4%,「発達上の課題の伝達」は39.5%であった。また,「発達上の課題の伝達」の実施の有無を保護者への支援の実施の有無と定義し,これを従属変数,施設の要因や保育士の要因を説明変数とし,多変量解析を行った。その結果,保護者への支援「実施あり」と有意な関連があったのは,「保育カンファレンスに参加し,実施した支援の振り返りを行うこと」,「他機関との連携度」,「支援を行う自信があること」等であった。

結論 本研究により,気になる子の保護者への支援の実施に関連する要因が明らかになった。発達障害の早期支援体制の整備に向けて,保護者への支援を推進するためには,保育士が実施した支援の振り返りを行えるように,保育カンファレンスの実施方法を検討することや,保育士が,他機関との連携を強めることが必要であると示唆された。たとえば,発達障害者支援地域協議会において保育現場の課題の解決を目指すことも有効であると考えられる。

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© 2019 日本公衆衛生学会
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