目的 阪神・淡路大震災から25年になる。被災地では多くの建物が倒壊し,大量のアスベストが飛散した。震災に関連したアスベストによる健康被害者は,マスコミによって公表された6名であるが,国や自治体による実態調査は行われておらず詳細は不明である。アスベストによる環境汚染の状況を検証し,健康リスクを評価するために,被災地で実施された調査資料を検討した。
方法 震災直後から環境庁が実施したアスベスト濃度測定の調査資料を検討した。
結果 倒壊した建物からは最も危険とされている青や茶石綿が飛散し混合曝露の状態であったが調査では白石綿濃度だけの測定であった。これがアスベスト濃度として表記されており,白石綿濃度だけに基づく健康リスクは実際よりも低く評価されていると考えられる。
結論 被災地におけるアスベストによる環境汚染は多角的な角度からの検証が重要であり,混合曝露による健康リスクを正しく評価しなければならない。作業員の他にも住民やボランティアなどのハイリスクの人達への注意喚起が求められる。さらに,二次災害としての健康被害者の拡大を防止するために,実態調査や追跡調査が重要であり,その受け口としての検診体制の構築が急務である。