日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
資料
保健師活動におけるICT活用およびデジタル化の実態と課題:地方自治体の統括保健師を対象とした全国調査
赤塚 永貴 田口 敦子吉田 知可宮川 祥子杉山 大典
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 72 巻 9 号 p. 606-615

詳細
抄録

目的 本研究の目的は,地方自治体の統括保健師等を対象にした全国調査により,保健師活動におけるICT活用やデジタル化(以下,ICT活用)の実態や課題等を把握し,今後の保健師活動におけるICT活用推進にむけた示唆を得ることである。

方法 47都道府県および1,741市区町村に勤務する統括保健師およびそれに準じる立場の保健師を対象に,オンライン無記名自記式調査を実施した。調査内容は,自治体種別(都道府県・政令指定都市・保健所設置市区・その他市町村),保健師活動におけるICT活用の積極度・順調度,実際の取組状況,進める上での課題等であった。調査期間は2023年10月から2024年1月であった。

結果 本調査の回収数は577件(回収率32.3%)であり,524件を有効回答とした。積極度・順調度について,回答した自治体の55.9%が積極的に推進しているとの認識を示した一方で,順調に進んでいるとの認識は26.7%に留まった。実際の取組状況について,最も高い割合で実施されていたのは「オンライン通話による会議の実施」83.0%であった。取組の内容や自治体種別によって,実施状況は異なっていた。保健師の課題について「保健師活動の対象のうち,デジタルへの対応が難しい対象者への懸念がある」89.1%が最も多く,「保健師活動におけるICT活用に関するビジョン・方針を定めることが難しい」86.1%,「保健師活動におけるICT活用を推進する手順がわからない」82.8%のいずれも8割を超える自治体が課題と認識していた。組織の課題について「保健師活動におけるICT活用を進めるための予算確保が難しい」52.7%が最も多く,自治体種別にみると「保健師が活用できるインターネット環境が十分でない」では都道府県の約6割,「保健師が利用可能なICT機器が不足している」では都道府県・政令指定都市等において約6割が課題と認識していた。

結論 多くの自治体が積極的にICT活用を推進する一方,その進捗については順調ではないとの認識であることが明らかになった。また自治体種別によって進捗状況や取組内容は異なっていたが,課題は共通するものもあった。ICT活用の推進に向けては,保健師のICT活用にむけた人材育成を進めるとともに,自治体間での事例やノウハウの共有が必要である。

著者関連情報
© 2025 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top