日本公衆衛生雑誌
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細胞診と自己採取ヒトパピローマウイルス検査を選べることの効果:北海道での子宮頸がん検診未受診者対策の成績
谷口 しのぶ櫻木 範明シャロン ハンリー築山 真如月藤田 博正寒河江 悟梶井 直文渡利 英道玉腰 暁子
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論文ID: 21-025

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抄録

目的 細胞診と自己採取ヒトパピローマウイルス(HPV)検査を選べる受診再勧奨方法が子宮頸がん検診未受診者の検査応答率と病変発見率に及ぼす効果を明らかにする。

方法 2016~2018年度に江別市の子宮頸がん検診未受診者に対して,子宮頸部細胞診(以下細胞診)あるいは自己採取腟分泌物検体によるHPV検査(以下自己採取HPV検査)を選択できる受診再勧奨を行った。主要評価項目は検査応答率,病変発見率(≥CIN2: cervical intraepithelial neoplasia grade2以上および≥CIN3 : CIN3以上),副次評価項目は要精検率,精検受診率である。

結果 未受診者総計6,116人の応答率は15.9%であり,内訳は細胞診6.5%,HPV検査9.4%だった。HPV検査応答者の11.7%がHPV陽性であり,精密検査への選別をする細胞診トリアージの対象となった。病変発見率はHPV検査応答者で≥CIN2 : 1.7%,≥CIN3 : 0.9%,細胞診応答者で≥CIN2 : 1.0%,≥CIN3 : 0.8%であり,どちらの病変基準にも差がなかった。細胞診トリアージ受診者における病変発見率は≥CIN2 : 23.8%,≥CIN3 : 11.9%であった。

結論 本フィジビリティスタディで,自己採取HPV検査+細胞診トリアージ法は,応答率が細胞診単独法よりも高く,かつ効率的に子宮頸部病変を発見できることが示され,未受診者対策として有効と考えられた。自治体の共同で本法の手順を標準化し,有用性を検証することが望まれる。新型コロナウイルス感染蔓延下の子宮頸がん検診受診促進策としても検討に値すると考えられる。

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