日本公衆衛生雑誌
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介護補助・保育補助人材として就労意向を持つ高齢者の特性
相良 友哉村山 洋史高橋 知也西中川 まき藤原 佳典
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論文ID: 21-119

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抄録

目的 急速な高齢化の進展や人口減少によって,様々な業界で働き手が不足しており,とくに,介護や保育などの福祉業界において深刻な問題となっている。その対応策のひとつとして,自立した日常生活を送れているいわゆる「元気高齢者(アクティブシニア)」を補助人材として雇用し,施設の非専門的な周辺業務を担ってもらう取組みが散見される。しかし,これらの業務への就労意向を持つ者の割合や,その要件は十分に整理されていない。そこで,本研究は,介護補助や保育補助としての就労意向を持つ高齢者の特性を明らかにすることを目的とした。

方法 「NPO法人りぷりんと・ネットワーク(りぷりんと)」に加盟している首都圏の絵本読み聞かせボランティア団体の会員で60歳以上の者374人を対象とした自記式アンケート調査を実施し,有効回答295票を得た(回収率78.9%)。調査期間は2019年10月~11月であった。本研究では,介護補助と保育補助のそれぞれについて,「就労意向の有無」を目的変数,「就労関連項目」「健康状態」「社会関係・社会参加状況」を説明変数,「人口統計学的変数」を調整変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。分析に際して,欠測値を多重代入法により補った(10ファイルを作成)。

結果 補助人材として就労意向を持っている高齢者は,介護補助で72人(24.4%),保育補助で107人(36.3%)見られた。二項ロジスティック分析の結果,日頃から生涯学習活動に参加している人ほど介護補助へ就労意向を持っており(オッズ比[OR]:2.98,95%信頼区間[95%CI]:1.40-6.34),主観的健康感が高い人ほど保育補助へ就労意向を持っている傾向が見られた(OR:2.41,95%CI:1.01-5.76)

結論 補助人材として就労意向を持ちそうな高齢者として,介護補助では生涯学習活動の参加者,保育補助では主観的健康感が高い人という特性が見られた。これらの特性を持った高齢者に的を絞ったリクルートをすることで,補助人材として就労する高齢者の掘り起こしに寄与できる可能性がある。

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