日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766

この記事には本公開記事があります。本公開記事を参照してください。
引用する場合も本公開記事を引用してください。

外出頻度を尋ねる際の外出の定義の有無により生じる「閉じこもり」群の要介護リスクの違い
平井 寛近藤 克則
著者情報
ジャーナル フリー 早期公開

論文ID: 21-130

この記事には本公開記事があります。
詳細
抄録

目的 介護予防の重点分野の1つ「閉じこもり」は,外出頻度が週に1回未満の者とされることが多い。しかし質問文に外出の定義がない場合,外出しても外出と認識せず,頻度を少なく回答し閉じこもりと判定される可能性がある。本研究では,高齢者対象の質問紙調査において,外出の定義の有無による閉じこもり割合,要介護リスクの違いを明らかにする。また,目的別の外出頻度を用いて,週1回以上外出しているにもかかわらず閉じこもりとなる「外出頻度回答の矛盾」に外出の定義の有無が関連しているかどうかを検討した。

方法 愛知県の4介護保険者A~D在住の自立高齢者に対し2006~2007年に行った自記式調査の回答者10,802人を対象とした。全般的な外出頻度を尋ねる際,保険者Dのみ「屋外に出れば外出とします」という定義を示した。また全4保険者で,買い物等5種類の目的別外出頻度を尋ねた。全般的な外出頻度で週1回未満の者を「全般的閉じこもり」,目的別外出頻度いずれかで週1回以上の者を「目的別非閉じこもり」とした。「全般的閉じこもり」について,約10年間の要介護認定ハザード比(Hazard Ratio, HR)の違いを検討した。「目的別非閉じこもり」かつ「全般的閉じこもり」の者を「外出頻度回答に矛盾がある者」とし,発生割合,発生に関連する要因のPrevalence Ratio(PR)を算出した。

結果 全般的閉じこもりの粗割合は保険者ABCでは11.7%であったのに対し,定義を示した保険者Dでは2.8%であった。保険者ABCに対し,保険者Dの全般的閉じこもりは要介護認定を受けるHRが有意に高かった(HR=1.56)。目的別非閉じこもりであるにもかかわらず全般的閉じこもりという矛盾回答は保険者ABCで10.2%,保険者Dで2.2%みられた。矛盾回答の発生に正の関連を示したのは女性,高い年齢,配偶者・子世代との同居,教育年数が短いこと,主観的健康感がよくないこと,うつ,島嶼部の居住者であることであった。外出の定義を示した保険者Dでは有意に矛盾が発生しにくかった(PR=0.29)。

結論 外出の定義の有無により閉じこもり割合,要介護リスクに違いがみられた。外出の定義がないことは外出頻度回答の矛盾発生に有意に関連していた。閉じこもりを把握するために外出頻度を尋ねる際には外出の定義を示すことが望ましい。

著者関連情報
© 2022 日本公衆衛生学会
feedback
Top