日本公衆衛生雑誌
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地域住民における緊急事態宣言期間の診療科別医療機関受診控えと受診困難状況
小山 史穂子勝見 友一尾谷 仁美宮代 勲
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論文ID: 22-021

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抄録

目的 COVID-19感染拡大に伴い,複数回の緊急事態宣言(以下,宣言)が発令され,院内感染を恐れる受診控えや,感染症対策による医療機関の一部機能停止による受診困難が問題となっている。本研究では,大阪府の1回目と3回目の宣言期間中の受診控え,受診困難の状況を診療科別に報告する。

方法 大阪府が運営し,18歳以上の府民を対象とした健康アプリ「アスマイル」を用いて,1回目と3回目の宣言期間直後および期間終盤に宣言に伴う受療行動等の変化に関するアンケート調査を行った(調査期間:2020/6/23-7/12および2021/6/1-20)。全体質問を,「宣言期間中,医療機関の受診を控えようと思いましたか」という設問に対して,「とても思った/思った/あまり思わなかった/思わなかった」から単回答で,診療科別の受診控えは「宣言期間中,受診を控えようと思う診療科はありましたか」と,受診困難は「宣言期間中に受診したかったが,医療機関側の都合(休診,時間短縮,医療物資不足など)で受診ができなくなった診療科はありましたか」と設定し,各々「なかった/内科/外科/皮膚科/小児科/精神科・心療内科/整形外科・リハビリテーション科/眼科/耳鼻いんこう科/産婦人科/歯科/その他」の中から複数選択可で回答を得た。利用機会のある診療科に限定するため,2020年調査で診療科別に過去1年間に受診経験のある者だけにし,受診控えと受診困難の割合を算出した。

結果 両調査に回答した12,469人のうち,性・年齢が明らかである12,461人を解析対象者とした(2021年調査時:男性;4,389人,女性;8,072人,平均年齢:55.2歳(±11.4))。全体質問は,2020年調査で6,343人(50.9%)が,2021年調査では1,451人(11.6%)が受診を控えようと「とても思った」と回答した。受診控えは2020年調査で歯科61.5%,内科59.2%で高く,2021年調査でも内科29.9%,歯科27.5%で高かった。受診困難ではいずれの診療科も10%未満と低く,最も高い診療科は両調査ともに小児科で8.9%,3.6%であった。

結論 1回目の宣言期間では歯科と内科で半数以上が受診控えの意向があり,3回目の宣言期間中には減少したが,一定数は発生していたことがわかった。受診困難はいずれの診療科でも僅かであった。

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