日本公衆衛生雑誌
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市区町村における母子保健情報の電子化および利活用の現状と課題
堀内 清華秋山 有佳杉浦 至郎松浦 賢長永光 信一郎横山 美江鈴木 孝太市川 香織近藤 尚己川口 晴菜上原 里程山縣 然太朗
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論文ID: 22-027

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抄録

目的 母子保健情報の利活用は,日常の母子保健活動における個別支援に貢献できると期待される。2020年6月より,乳幼児健康診査(以下,乳幼児健診)等の情報の電子化が各市区町村に義務付けられたが,その実施状況は明らかではない。2020年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(健やか次世代育成総合研究事業))「母子の健康改善のための母子保健情報利活用に関する研究」研究班(研究代表者:山梨大学 山縣然太朗)は,情報利活用における課題を明らかにすることを目的として,市区町村における実態調査を行った。

方法 2020年12月1日から2021年1月29日に,全1,741市区町村(指定都市,中核市,保健所設置市,特別区を含む。)の母子保健主管部(局)担当課を対象に,乳幼児健診等の情報の電子化,ならびに情報連携の実施等を問う自記式調査票による調査を行った。

結果 全国1,741市区町村のうち985の市区町村から回答を得た(回答率 56.6%)。乳幼児健診における最低限の項目の電子化をしていたのは,3-4か月,1歳6か月,3歳児健診で931(94.5%),936(95.0%),936(95.0%)であった。副本登録については,164(16.7%)の市区町村では情報の再入力,42(4.3%)では,何らかの追加作業が必要であり,追加作業が必要な市区町村では,必要のない市区町村に比べて有意に負担を感じていた。住民の転出入等に伴い乳幼児健診等の情報連携を実施した市区町村は,130(13.2%),実施しなかったのは756(76.8%),転出・転入なしが90(9.1%)であった。情報連携の実施率は指定都市・中核市・特別区で有意に高かった。情報連携を行わなかった理由として,指定都市・中核市・特別区では,「転入者を随時把握して情報照会することが負担」,その他の市町村では,「従来の方法で情報共有ができており,情報連携を行う必要性を感じない」がより多い傾向にあった。

結論 最低限電子化すべき項目は9割以上の市区町村で電子化されていたが,情報連携実施は一割程度であった。都市部および大都市周辺の市区では情報連携の作業負担が大きく,その他の市町村では情報連携の利点を感じていない傾向が示された。電子化項目の整備,即時で簡便な副本登録による作業負荷軽減など多面的な取組が必要と考えられた。

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