日本公衆衛生雑誌
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電動カート導入による高齢者の主観的変化と要介護リスクの関連:1年間の縦断研究
渡邉 良太 斉藤 雅茂小林 周平井手 一茂福定 正城近藤 克則
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論文ID: 25-001

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抄録

目的 国土交通省は,時速20 km未満で公道を走行可能なグリーンスローモビリティ(以下,電動カート)の導入を推進している。電動カート導入2か月後に社会的交流などの主観的指標の改善が報告され,長期的には介護予防効果が期待されている。そこで,電動カート利用および導入をきっかけに主観的指標が改善した高齢者において,1年後に要介護リスクが低減するか検証する。

方法 大阪府河内長野市,奈良県王寺町の住宅地で2022年7~8月より電動カートを運行した。運行前および1年後の2時点の自記式郵送調査に有効回答のあった65歳以上高齢者726人(河内長野市385人,王寺町341人)を分析対象とした。なお,1年後調査時に王寺町では電動カート運行継続していたのに対し,河内長野市では停止していた。目的変数は1年後の要介護リスクとし要支援・要介護リスク評価尺度(以下,リスク点数,点が高いほど高リスク)を用いた。説明変数は電動カート利用有無,電動カートをきっかけとした主観的指標の変化とした。主観的指標は,外出(3指標),社会的行動(5指標),ポジティブ感情(4指標)が電動カートをきっかけに増えたか確認した。調整変数はベースライン時点の性,リスク点数,教育歴,主観的経済状況,就労,日常生活活動動作,婚姻状況,同居とした線形回帰分析を行い,非標準化係数(B)を算出した。

結果 電動カート利用群は290人(39.9%)であった。電動カート非利用群を基準とした利用群のBは0.11(95%信頼区間-0.40~0.63)で有意な関連を認めなかった。主観的指標についても全対象ではいずれの項目も有意な関連は認めなかった。一方,王寺町のポジティブ感情である日常生活における楽しみが増えた,気持ちが明るくなる機会が増えた,生きがいを感じる機会が増えた者では,そうでない者と比較してそれぞれ-1.78(-3.21~-0.35),-1.51(-2.87~-0.15)-1.91(-3.53~-0.30)で有意にリスク点数が低減していた。

結論 電動カート利用群全体では要介護リスクとの関連を認めなかったが,運行継続していた王寺町のポジティブ感情増加者で要介護リスク低減していた。電動カートは移動支援のみならずポジティブ感情を生み出すという所見に再現性が確認され,そのような変化がみられた者では介護予防に寄与する可能性も新たに明らかとなった。

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