前周期金属を含むPd系金属間化合物(Pd3M: M = Nb, Ti, Zr)をアーク熔解により調製し,その表面の電子状態をX線光電子分光により評価した。調製した金属間化合物の鋳塊を大気下にて粉砕した場合,その表面は酸素により酸化され金属Pdと前周期金属の酸化物の混合物に分解した。これらの酸化物は,水素雰囲気下800 ℃で還元処理を行っても0価の金属状態に還元されなかった。また,これらの金属間化合物を酸素濃度1 ppb以下の窒素雰囲気下にて粉砕した場合,Pd3Zrでは表面の大部分が酸化されず金属間化合物の状態が維持されるのに対し,Pd3TiやPd3Nbでは表面が完全に酸化されるということが判明した。これらの結果は,前周期金属を含む金属間化合物が酸素に対し極めて敏感であり,表面の状態を維持することが困難であることを示している。