2016 年 59 巻 5 号 p. 211-218
CO2物理吸収メカニズムの解明に向けた基礎的なアプローチとして,ジエチレングリコール(DEG),トリエチレングリコール(TEG),ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)の3種類の汎用溶媒を対象に,CO2溶解条件下における分子間ミクロ相互作用を分子動力学法によって評価した。特に常温・常圧付近において,各溶媒系のミクロ相互作用が溶媒分子の拡散性に与える影響を考察すべく,拡散係数と動径分布関数(RDF)を解析した。その結果,DEGDMEがDEGやTEGよりも1けた程度大きな拡散係数を示すことを確認した。さらに,溶媒分子間のRDFに加え,CO2分子と溶媒分子間のRDFを解析した結果,DEGとTEGは溶媒分子間の相互作用が支配的であるのに対し,DEGDMEはCO2分子と溶媒分子間の相互作用が優位であると示唆された。これらの結果は,溶媒分子間の相互作用が強いほど溶媒分子の拡散性が低下することを,分子レベルの観点から裏づけるものである。