2017 年 60 巻 1 号 p. 10-18
光触媒による水分解は,温室効果ガス等を排出せずに光エネルギーを化学エネルギーに直接変換することが可能であることから,次世代の水素製造法として注目されている。本稿では,これまでに検討してきた色素修飾した無機半導体光触媒について紹介する。無機半導体光触媒の表面を様々な色素で修飾すると,水の光分解活性が向上した。時間分解光起電力測定と過渡吸収スペクトル測定の結果からは,色素修飾によって無機半導体の電荷分離寿命が長期化していることが明らかとなった。また,波長依存性の検討からは色素修飾光触媒中の電荷移動機構は植物の光合成と同じ二段階励起機構であり,紫外光と可視光のエネルギーを吸収することで水の光分解反応が進行していることが明らかとなった。これらの研究から,色素による表面修飾は無機半導体光触媒の可視光吸収能と水分解活性を同時に向上させることが可能な手法であることを見出した。