2018 年 61 巻 5 号 p. 272-281
有機ハイドライド法は水素貯蔵法の一つとして知られる。この際に芳香族の水素化において平衡制約のため,未反応の芳香族が残存することが問題となる。そこで本研究では,未反応トルエンのみを選択的に吸着分離できる複合系酸化物材料の探索を行った。いくつかのLa系複合酸化物を検討した結果,La0.8Ba0.2CoO3−δ(LBCO)酸化物が高い吸着量とトルエン選択吸着性を示すことを見出した。電子状態ならびに吸着状態を各種実験ならびに計算化学によって検討した結果,LBCO中のCoイオンがCo4+の状態を取り,格子内のCo4+イオンと表面酸素の協奏がトルエン選択吸着に対して重要な役割を果たしていることを見出した。