Journal of the Japan Petroleum Institute
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総合論文
不均一系触媒によるセルロースとキチンからの化学品合成
福岡 淳 小林 広和
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2023 年 66 巻 2 号 p. 48-56

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抄録

本総説では,植物や海洋由来の豊富なバイオマスであるセルロースやキチンを原料として,高付加価値物を合成するための不均一系触媒に関する我々の研究を解説した。セルロースの分解では,担持白金触媒がセルロースを加水分解水素化してソルビトールに変換することを見出した。その後,炭素担持白金が耐久性の高い二元機能触媒として働くことを見出し,担体が弱い固体酸として機能することを明らかにした。これが,セルロース加水分解用の弱酸点をもつ炭素触媒の開発につながった。セルロース加水分解では,結晶セルロースと炭素触媒を混合してボールミルによる前処理を行い,固体基質と固体触媒の物理的接触を増加させることが必須である。この方法により,セルロースからグルコースの高速かつ高選択的な合成が可能となった。活性-構造相関の検討から,セルロースが触媒上の芳香族表面にCH-π 結合を介して吸着し,弱酸点がセルロースのグリコシド結合を攻撃する反応機構を解明した。触媒性能の比較から,不均一系炭素触媒が酵素や均一系硫酸触媒よりも優れていることを示した。さらに,炭素触媒はバイオスティミュラントとして機能するセロオリゴ糖の合成にも有効である。我々はキチンの解重合についても検討を行い,メカノキャタリシスによる加水分解によりN-アセチルグルコサミン(NAG)やキチンオリゴ糖が高選択率で得られることを見出すとともに,NAGはさらに様々な有機窒素化合物に変換することが可能であることを示した。

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