2023 年 66 巻 3 号 p. 88-93
可視光を利用した選択的な有機変換反応は化成品合成を環境調和型プロセスにシフトさせる潜在性を有し,これまでに色素増感型光触媒を用いた様々な反応が開発されてきた。色素分子は固体表面上で凝集体を形成し吸収スペクトルが変化するが,凝集状態が光触媒活性に与える影響を検討した例はほとんどない。そこで本研究では,酸化チタンへの吸着部位としてカルボキシ基を有するtetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrin (TCPP) 分子を色素として用い,酸化チタンに吸着させる際の条件を変化させて凝集状態の異なるTCPP修飾酸化チタン光触媒を調製した。調製した触媒について,酸素を酸化剤としたベンジルアルコールの酸化反応の光触媒活性を評価したところ,凝集度合いが低い試料で高い触媒活性を示すことが分かった。各試料の光吸収量と触媒活性との関係から,色素分子の凝集により光の吸収量が減少するため活性が低下すると結論した。