石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
酸化マンガン触媒を用いたコークス炉ガス洗浄排水の超臨界水酸化反応
大島 義人稲葉 晃一幸田 清一郎
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2001 年 44 巻 6 号 p. 343-350

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抄録

有害排水の新規な処理方法として, 固体触媒を用いた超臨界水酸化反応が注目されている。本研究では, MnO2を触媒とするコークス炉ガス洗浄排水の超臨界水酸化反応について, 反応器設計の基礎的データの収集と, 共存物質の存在による反応速度への影響に関する情報を得ることを目的とし, 速度論的な解析を行った。コークス炉ガス洗浄排水の主成分はアンモニアであるため, まずアンモニア溶液について反応を行い, MnO2がアンモニアの完全分解に有効に働く触媒であることを確認した。続いて, 実排水のモデル溶液として, アンモニアとフェノールの混合溶液について実験を行った。アンモニアの分解速度は, アンモニア溶液に比べてモデル溶液の方が小さくなった。アンモニアの存在はフェノールの分解に影響を与えないが, 全有機炭素 (TOC) の分解を強く抑制することがわかった。このように相互に反応を阻害する効果は, 全ての化学種が同一活性点に競争的に吸着することを仮定した Langmuir 型モデルによって説明できる。希薄な実排水を用いた実験でも, 特に0.5秒以下の短い接触時間では同様の阻害効果が確認された。しかし, 500°C, 2秒程度の条件において, 非常に高いアンモニア, TOC反応率が得られた。これらの実験結果より, 固体触媒を用いた超臨界水酸化反応は, コークス炉ガス洗浄排水の完全分解に有効な方法であることが示唆された。

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